生き抜くための挑戦 in 道後友輪荘

タンデム自転車NONちゃん倶楽部20171友輪荘

 

えひめ国体開催の年。障がいを 持ちながら競技にチャレンジ している方々の生の声を みなさんにお届けいたしました。

平成29年2月26日(日) 愛媛県松山市道後町 2-12-11 愛媛県障がい者更生センター 道後友輪荘


井上さんは19歳の時、自ら運転する車でスピードの出し過ぎで、カーブに差し掛かったところでコントロールを失い横転するという大事故を起こしました。そして第6頸椎を損傷し、鎖骨辺りから下の運動機能に加え肘の伸展・手首の掌屈・手指も全て動かない状態になってしまいました。麻痺部には感覚も無く、身体の発汗機能も失われています。そのため夏場はクーラーと霧吹きで身体を冷やさなければならないという状況。一生寝たきりになると覚悟した事もあったそうです。

事故の翌年、看護師長さんから教えてもらった大分県別府市の国立別府重度障害者センターに入所しました。そこで車いすマラソンとの出会い。さらにドイツのハインリッヒ・クーベール選手に出会ったことでパラリンピックへの挑戦を始めた事を、映像を交えながらお話ししていただきました。  今では一人で釣りに出かけて、30センチのホゴが釣れて嬉しかったというお話を聞いたとき、私の想像力が追いつかないほどの工夫をされてるのだと感じました。また講演に参加したみなさんもたくさんの気付きをいただいたと思います。

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ここで井上さんの口からよく出てくる言葉を「井上語録」としてご紹介します。とても素晴らしいことばの連発です。

〜〜〜〜●井上さんが生き抜くための「井上語録」〜〜〜〜

*大変ですねとよく言われるが、動けなくなった自分は他人が 思うほど大変だとは思わない。

*同じレベルの人が出来るなら、僕にも可能性があると思った。

*出来ることが増える喜びで、辛いと思ったことはない。

*楽しそうだなと思ったら、先ずやってみる。その気持ちが 智恵や工夫を生む。

*障害を持ったお蔭で、海外にも遠征できるようになった。

最後に皆さんへのメッセージ「障がい者マークの駐車場は車いすの上げ降ろしをするため、ドアをいっぱいに開ける必要があるので横幅が必要です。」 「障がいを持つ人は、健常者からの声がけに感謝をして、自分で出来ることでも好意を受け入れる姿勢が大切だと思います。」

参加者からは「テレビなどで見た事はあったけれど、目の前でお話しを聞くと心が洗われました。」「素晴らしい生き方にふれて、私も頑張らねばと思いました。」など、沢山の感動の声をいただきました。

ゲストコメンテーター

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池田 斉さん

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野瀬 毅さん

池田 斉さん

事故後しばらくは「死にたい死にたい」と言って奥さまを困らせていたそうです。星野富弘さんなど、自分よりも症状が重い方の頑張りを見て前向きに生きられるようになった。国体では金メダルを目指しますと宣言。見事金メダルを獲得。選手宣誓もされました。

 

野瀬 毅さん

視覚障がいの方がチャレンジできるスポーツ競技の紹介や、視覚障害者協会が取り組んでいる活動などを説明していただきました。ご自身はグランドソフトボールやサウンドテーブルテニスをしていらっしゃいます。その後、お母様とのやり取りで「そこに置いておくからね」と言われて、「そこでは分からんと何度も言うのですが」と言う話があった時、私と主人の会話もそうだったなあと思い出し言葉の表現の難しさを再確認しました。


 講演をおえて 〜 井上 聡 〜

タンデム自転車NONちゃん倶楽部20171友輪荘

みなさんの前で自分の障がいの状況やどんな工夫をして生活しているか、障がいや人生に対する考え方などをお話しさせていただきました。その中で「前向きですね〜」とか「強いですね〜」という感想をいただきましたが、正直、自分自身を前向きだと思ったことはありません。ただ1つ思っていることは、自分の知らないことを知りたいという気持ちを持ち続けることでしょうか。この世界のどこかで誰かが自分の知らない事を楽しんでいたり涙を流すほど感動したりするほどの事を、自分が知らない事がただただ悔しい。単純に「自分もその気持ちを味わいたいと思って生きているだけで、それには障がいの有無は関係ない。」という事をもう少しお話しできればよかったかなと思っています。 講演後に、みんなで食事をしながらいろんな話ができたのは良かったと思います。今回の出会いをきっかけに、いろんなことに挑戦することが楽しいんだという事を実感してもらえると嬉しく思います。

 

心に染み入る講演会

〜〜〜〜●参加者の声●〜〜〜〜

福祉専門職

愛媛県視聴覚福祉センター支援課長 中川 幸士

今回、車椅子選手の井上 聡さんの講演会を企画したとの話を聞いた時に、正直関心を集めることができるだろうか?との不安が頭をよぎりました。そう思ったのは、タンデム自転車NONちゃん倶楽部は自転車をアイテムに視覚障がい者とその支援者を中心にアウトドア活動を基本としていたからです。そのような活動内容で集まる方々に今回の講演会の内容で参加者は集まるのだろうか?しかも、講師がタンデム自転車とは関係ない車椅子ランナーの井上さん。確かに井上さんは、愛媛県在住のロンドンパラリンピック日本代表選手と素晴らしいアスリートではありますが・・・、そんなことを思っていました。ところが、当日の会場内はいつも参加している視覚障がい者はもちろん初めて見かける健常者の方々など約50名が参加し満席状態ではありませんか。私は福祉専門職でありながら、障がい別を超えた障がい者福祉の関心の高さを改めて認識させられました。さらに知らないところで障がい者福祉に興味を持たれている方が多いことに感謝にも似たような気持ちを抱きました。そしていよいよ開演。井上さんとハンドサイクリングの池田 斉さんから障がいの受傷から今に至るまでの葛藤の人生話は、想像を絶する内容でありました。しかし障がいを受容してからの車椅子生活の工夫は障がい・健常に関係なく前向きなお話。同じ障がい者でも個々の状態で「出来ること」「出来ないこと」の違いがあることを目の当たりにし、参加者全員、心に染み入る講演内容でありました。NONちゃん倶楽部は、これまでもハンドサイクルの障がい者・車椅子と視覚障がいの重複障がい者・知的障がい者なども参加できる様々な企画を行ってきました。さらに障がいの有無に関係なく全ての人たちが交流できる社会づくりを目指して、今後も更なる挑戦を期待しています。